第14章

「西原貴志、もう帰っていいよ。目も覚めたし、自分で大丈夫だから」樋口浅子は歯を食いしばり、足の痛みを堪えながら、西原貴志の支えを押しのけた。

「そんなわけにはいかないよ。一人で病院に残すなんてできない」西原貴志は心配そうな顔で樋口浅子を見つめた。「浅子ちゃん、そんなに遠慮しないで。裕樹は来ないよ」

「そんなことは…」樋口浅子は力なく言葉を濁した。

だが否定できないのは、心のどこかで相澤裕樹が彼女を見に来てくれるかもしれないと思っていることだった。そしてもし来たときに西原貴志がいれば、きっと怒り出すだろう。

「西原貴志、自分のことを大事にして。私は誰かに来てもらうから」

西原貴志は樋...

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